有志エンジニアによる社内座席予約システム開発の半年間
この記事は、ニフティグループ Advent Calendar 2025 16日目の記事です。
はじめに
皆さんこんにちは。私は普段、ニフティライフスタイルで不動産サービスの開発をしています。
今回は、社内で立ち上げられた有志活動「価値創造ラボ」に参加し、座席予約システム開発のプロジェクトリーダーとして活動した半年間の記録についてお話しします。
通常業務とは異なる「自由な環境」で、私たちはどのようにチームを作り、組織の課題と向き合い、解決していったのか。技術選定からチーム運営の葛藤、そして実際に生まれた成果までのプロセスをお伝えできればと思います。
目次
価値創造ラボとは?
価値創造ラボは、エンジニアがゼロから新しい価値を生み出す挑戦の場として、開発部が企画・設立した社内プロジェクトです。通常の業務から一歩離れ、「自由度の高い環境でアイデアを形にする」ことを大切にしています。
ラボ立ち上げの背景
開発部が主導してこのラボを立ち上げた背景には、組織として以下の3つを実現したいという強い狙いがありました。
- エンジニアとしての発信: 社内外にもっと価値を届ける場をつくりたい
- ゼロイチ開発への挑戦: 普段の業務では経験しづらい「0から1をつくる」経験を積ませたい
- 文化の醸成: 自由でクリエイティブな文化をつくり、エンジニアのエネルギーを高めたい
実際の業務は既存プロダクトの改善や運用が中心になりがちです。そこで、会社があえて制約の少ない場を提供し、エンジニア主体の挑戦を後押しするためにスタートしました。
活動の目的
単なる“開発活動”ではなく、会社全体にポジティブな循環を生み出すことを目指しています。
- エンジニア個々の価値向上: 技術力に加え、発信力やチーム開発力を高める。
- 全社的な業務効率化: 現場の課題を解決し、働きやすい環境をつくる。
- 将来の種まき: 小さなアイデアから、将来的な新規事業につながる可能性を育てる。
メンバー構成
プロジェクトは、多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されました。
- 不動産開発エンジニア:3名
- 温泉開発エンジニア:1名
- 情シスメンバー:1名
- 役員・外部アドバイザリ:2名(相談役・意思決定サポート)
専門性が異なるメンバーが揃うことで、さまざまな視点を取り入れた開発が可能になりました。
リーダー担当になった背景
私自身がリーダーに立候補したのには、個人的な動機もありました。「まずはやってみたい」という衝動に加え、業務では経験しづらいゼロイチ開発を通じた成長、そして「チームを率いる役割に挑戦し、新しい自分を発見したかった」という思いです。 このプロジェクトは、私自身が「何者になっていきたいか」を考えるきっかけにもなりました。
テーマ:座席予約システム
今回、私たちが取り組むことになったテーマは、「フリーアドレスの座席予約システム」の開発です。当時、オフィス移転を控えていたタイミングでもあり、社内の座席運用における課題解決を目指しました。
当時の課題:毎月の「席争奪戦」
以前はスプレッドシートで座席予約を行っていましたが、運用には限界が来ていました。
- 早い者勝ちの競争: 月末の公開直後に人気席が埋まり、アクセスするタイミングで不公平が生まれる。
- 総務の手作業負担: 毎月のシート作成・更新が手作業で、ミスやコストが発生する。
- 座席の固定化: フリーアドレス制でありながら、いつも同じメンバーが同じ場所に固まって座ってしまい、部署を超えたコミュニケーションが生まれにくい。
社員には毎月の「席争奪戦」のストレスがあり、総務も運用負担を抱えていました。
解決の方向性
そこで私たちは、以下の解決を目指しました。
- 公平性の担保: 抽選機能を導入し、誰もが平等に座席を選べるようにする。
- 運用コストの削減: 毎月の更新作業を自動化し、総務の負荷を下げる。
「社内課題を自分たちの手で解決する」という価値創造ラボの第一歩として、最適なテーマでした。
開発プロセス
開発は約半年間。通常業務と並行しながら、有志メンバーで着実にプロダクトを形にしていきました。
進め方と技術選定
週次ミーティングを軸に進捗や課題を共有し、要件定義では総務部へのヒアリングを重ねました。 技術選定では「メンバーの興味」と「保守性」を重視し、以下のスタックを採用しました。
- Next.js: フロント・バックを統一でき、モダンな開発体験が可能。
- DynamoDB: コスト効率とスケーラビリティに優れたNoSQL。
- AWS Amplify: 初期構築・デプロイが容易で、開発スピードを落とさない。
MVPの定義と初期リリース
半年という期間の中で重要だったのが、「どこまでやるか」の線引きです。今回は以下を MVPと定義しました。
- ランダム抽選方式の座席予約
- 固定席ではなく、予約のたびに毎回ランダムな座席がシステムによって割り当てられる機能です。
- 自動予約設定
- 「出社する曜日」を指定し、予約タイプ(グループ予約か個人予約か)を設定するだけで、自動的に座席予約が完了する機能です。毎回の予約操作の手間を省きます。
- グループ予約機能
- チーム単位で近くに座れる機能です。事前に登録したグループ(最大6名:オフィスの島の最大席数)が、可能な限り同じ島(エリア)になるように抽選されます。
- 従業員管理機能(管理画面)
- 主に総務部が利用する機能です。入退社に伴う従業員の登録・削除をここで行うことができます。
UIの細かな作り込みよりも、「公平な抽選」と「最低限の運用」ができる状態を最優先し、まずはリリースすることを目指しました。
課題解決への取り組み:意思決定の裏側
開発で最も重要だったのは、多様な要望に対する「優先順位づけ」と「判断」でした。
要望の整理と優先度
開発初期、多くの要望が寄せられましたが、全てを実装するのは不可能です。「必須要件(ランダム予約、グループ予約など)」と「あったら嬉しい要件」に分類し、システムの目的に直結しないものは勇気を持って保留にしました。
アプリ化の見送り(トレードオフの判断)
「スマホアプリとして提供したい」という要望もありましたが、私たちはアプリ化を見送るという決断をしました。 工数やメンテナンス負荷を考慮すると、Web版でも十分にニーズを満たせると判断したためです。「やらないことを決める」ことも、プロジェクトを前に進める重要な判断でした。
公平性と使い勝手のバランス
最大の難所は「公平性(ランダム抽選)」と「利便性(グループ予約)」の両立です。 抽選だけでは使い勝手が悪く、グループ予約ばかりでは公平性が損なわれます。実際に運用が始まるとグループ予約の利用が想定より増えたため、今後は利用回数制限などのチューニングも検討しています。
想定外への対応
コアメンバーの離脱や、Amplifyの環境構築トラブルなど、想定外の事態も発生しました。しかし、週次ミーティングで都度方向性を修正し、スペシャリストに相談することで、チームとして乗り越えることができました。
成果と導入後の効果
こうして完成した座席予約システムを、私たちは「とるね。」と名付けました。
「席とるね」という日常会話のような親しみやすさと、口に出した時の響きの良さを大切にしました。正式名称には句点をつけて「とるね。」としています。
リリース後「とるね。」は着実に社内に定着し、明確な効果を生み出しています。





※スクリーンショットは開発環境のものであり、記載の人物名・組織はダミーです。
社員の変化
「座席予約の時間を気にしなくてよくなった」「月末の争奪戦がなくなって楽」といった声が多く寄せられています。予約開始の瞬間の競争がなくなり、多くの社員のストレスを解消できました。
総務の負荷軽減
特に大きかったのが、総務部の運用改善です。導入後のヒアリングでは、以下の具体的な効果が確認できました。
① 定量的な成果:作業時間ゼロへ
- 毎月のシート準備時間:約2時間/月 → 0時間
- 毎月発生していた作成・更新作業が完全になくなりました。
- ファイル破損対応:約1時間/3ヶ月 → 0時間
- スプレッドシート破損による情シスへの相談対応コストもゼロになりました。
② 定性的な成果:「見えない精神的負担」からの解放
数字以上に現場から感謝されたのが、心理的なストレスの解消です。
- 「まだ公開されないの?」というプレッシャーからの解放
- 準備遅れによる社員からの催促がなくなり、管理の精神的負担がほぼゼロになりました。
- 座席配置における“人間関係への気遣い”が不要に
- 「Aさんの隣にBさんだと気まずいかな?」といった、手動管理ならではの「人間関係への細かい配慮(気疲れ)」が一切不要になりました。
リーダーとしての学び
半年間のプロジェクトは、私自身にとっても大きな成長の機会となりました。
葛藤と乗り越え方
方向性に迷ったり、アジャイルのつもりが仕様を固めすぎてしまったりと、リーダーとしての壁にもぶつかりました。 それを乗り越える鍵となったのは、「メンバーとの対話」と「情報の見える化」、そして「完璧を目指さない割り切り」でした。対話を増やして認識を揃え、GitHub Projects等で状況を可視化することで、迷いを減らしていきました。
「任せる力」の大切さ
当初は自分で抱え込みがちでしたが、次第にメンバーを信じて任せること、そして自分の苦手な部分は素直に頼ることの重要性を実感しました。この関係性を築けたことで、自分ひとりでは生み出せない成果をチームで実現できました。
まとめと今後の展望
座席予約システム「とるね」は、価値創造ラボにとって「社内の課題を自分たちの手で解決する」という文化を体現した最初の成功事例となりました。 通常業務との両立は簡単ではありませんでしたが、エンジニアが主体的に動き、実際に感謝されるプロダクトを生み出せたことは、チーム全員の自信につながっています。
この経験を糧に、価値創造ラボはこれからも「エンジニアが自由に挑戦できる場所」として、新しい価値を届け続けていきます。
私たちは、このように自律的に課題を見つけ、解決する仲間を募集しています。
気になった方は是非採用ページをご確認ください!
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