「なぜ話が噛み合わない?」非エンジニアが開発に入って気づいた、エンジニアに必要な”3つの視点転換”
この記事は、ニフティグループ Advent Calendar 2025 17日目の記事です。
序論:非エンジニアとの開発で気づいた、エンジニアに重要な新たな視点
はじめに
エンジニアの皆さんは普段の開発業務の中で、非エンジニアの方とのやり取りや、開発以外のスキルを伸ばすうえで、こんなことに悩んだり困ったりしていませんか?
例えば、、、
- お客様やベンダーさんと技術的な会話をする際、うまく言葉が通じないと感じる
- 社内の非エンジニアの方(総務部門など)との会話の中で、お互いの話がどうも噛み合わない
- エンジニアとして技術的な能力は伸びてきているものの、より良い開発の上流工程を学ぶために「どういった視点を持てばいいのか」と日々悩んでいる
今回、私自身がもともとエンジニアではない立場でありながら、社内開発プロジェクトに開発メンバーとして参加する機会を得ました。その開発経験の中で、エンジニアと非エンジニアとのやり取りから得られたいくつかの重要な視点の違いがあり、システム開発においてプロジェクトを円滑に進めるための大切な視点転換を経験しました。この視点の違いに気づくことが、上記のような悩みの解決につながると思い、この記事がそのきっかけになれば幸いです。
自己紹介
ニフティライフスタイルのfisy_tsuです!
エンジニアではなく、普段は情シス業務を行っています。(業務内容:PCキッティング・従業員からのシステム面の問い合わせ・新規AIや新規ツールの導入検討など)
もともとは管理部門でも働いておりました。
そのため、開発業務経験は浅いものの、運用・利用者の立場に近い管理部門としての視点も持ったメンバーとして開発プロジェクトに参加しました。
プロジェクトの背景
まずはどんなプロジェクトだったかを簡単にご説明します。
私たちが取り組んだのは、社内の座席管理システムをゼロから構築するプロジェクトでした。当社のオフィスはフリーアドレス制を採用しており、以前は座席管理を全従業員がスプレッドシートで行っていました。しかし、これによって席を確保したまま使わない人や、主管部署(総務部門)の管理工数がかかっていること、さらにはフリーアドレス制なのに「結局毎日同じ席に座っている」という固定席化の懸念などが生まれていました。
この背景をより良いものに変えるべく、社内エンジニアの有志(自分を含め5名)が集まって、座席管理システムを社内開発するプロジェクトが立ち上がりました。
プロジェクト自体は開発メンバーの技量が高く、とても良いシステムが出来上がったと思います。ただ、振り返ってみると開発を進める中でもう少し視点を変えた取り組み方も必要だったかなと感じております。そのため、この気づきを今回記事にしてみました。
関連ページの紹介:
- 今回システムを開発してくれたエンジニア側の技術解説記事はこちら!
目次
【視点①】「何を作るか」より「なぜ作るか」へ
私が開発現場で最初に重要と感じた視点の1つ目は、「なぜ作るか」の視点の重要性です。
開発当初から感じた違和感
プロジェクトスタート時に、メンバーが集まって話を進める段階で、私は最初の違和感を覚えました。それは、構築の視点(何を作るか)から話が進んだことです。
- Pull型で見るのが大変なので、PUSH型の通知を出すのはどうか
- 予約枠の細分化を実装するのはどうか
- など
課題解決に向けた実装をすぐに頭に浮かぶことはとても良いことなのですが、しかし、最初に議論すべきは「このシステムで何を目指したいか(なぜ作るのか)」であるべきではないかと感じました。
構築視点に偏った際に生じるリスク
システム開発をする前提には、必ずそのシステムを使う人が達成したい「目的」や「運用」が存在します。どういったシステムにするかどうかは、その目的を達成する手段になります。そのため、主に利用する関係者(主管部署など)も交えて目的を議論・整理することから進める視点を大切にしないと、たとえ技術的に優れたシステムが完成しても”誰も使わないシステム”となってしまうこともあるのではと思います。
使ってもらえるシステムへ
今回は結果として非常に良いシステムになりました。それは、エンジニアの技術力の高さもありますが、社内の座席管理を行うというとてもシンプルな開発プロジェクトだったことも1つの要因と思います。ただし、関係者が多数に及ぶ大規模なシステム開発の際には、果たして今回のようにうまく開発できていたかはあまり自信がないです。
”目的を果たせるシステム”にし、”使ってもらえるシステム”にするためにも、開発開始時には「構築から考える視点」を一度取り除き、関係者ともコミュニケーションを取りながら、「このシステムで何を目指したいか(なぜ作るのか)」を考える視点を持つことが大切だったと今回振り返ってみて感じています。
【視点②】「開発視点」から「運用・利用者視点」へ
2点目の気づきは、非エンジニアとの会話において、エンジニア自身の視点を「システム内部」から「運用者や利用者」へと切り替えることの重要性です。今回の開発プロジェクトの中でも、主管部署である総務部門と話す場面などにおいて、視点の違いでお互いの話がかみ合わなかった場面もあり、この視点の理解は重要かなと感じました。
エンジニアの論理:システム構造ありきの説明
エンジニアは、「システムの裏側はこういう動作をしているので」や「ここでフラグを立てています」といった、システム構造ありきの専門用語で説明しがちです。それはシステム設計側からの視点になっているからです。
非エンジニアの論理:運用フローありきの要求
非エンジニアである運用担当者や利用者は、技術的な仕組みよりも「普段の業務でこういった運用があって、なのでシステムではこういう風に使いたい」という運用フローに焦点をあてた視点で話します。この視点で話す背景として、非エンジニアはシステムのアルゴリズムや構築プロセスには馴染みが薄く、その反対に、業務に関する運用フローに馴染みが深いことが挙げられます。こうした特性の違いが、エンジニアとの視点の違いを生む要因の一つとなります。
視点の違いで生じること
エンジニアと非エンジニア(運用・利用者)とコミュニケーションがうまく取れない結果、要件を満たしていないシステムになってしまうケースもあるでしょう。
- 非エンジニア(運用・利用者):「イレギュラーの運用が起きたときに、このシステムだと全然対応できないんだけど…」
- エンジニア:「言われたとおりに作りましたけど…」
非エンジニアとの会話で意識する視点とは
非エンジニアにとって、システム内部のロジックまで考慮して要件を言語化することは、普段の業務と勝手が異なりハードルが高いものです。そこで、システム構造を理解しているエンジニア側が、運用者の意図を汲み取り、システム要件へと「翻訳」するような歩み寄りの姿勢が大切だと感じました。
具体的には、エンジニアが非エンジニア(運用・利用者)へ説明する際には、設計や開発用語は使わず、「運用フロー」に沿った言葉などの非エンジニア側の視点に立って言葉を選ぶことで、円滑なコミュニケーションと認識合わせに繋がります。この視点を持って会話できることが、システム開発を進める中で非エンジニア(運用・利用者)との連携をスムーズに進められ、より良いシステムを一緒に作り上げることにつながると思います。
この「運用者側の視点に合わせて会話する」というのは、エンジニアが磨くべき重要なスキルの一つだと感じました。
【視点③】非エンジニアにない発想の提案へ
視点を転換し、「なぜ作るか」や「運用」を深く理解した上でプロジェクト成功の鍵となったのは、エンジニアの技術力と非エンジニアの要望をいかに効果的に融合できるかという点でした。そして、これらがうまく噛み合った結果、私たちのプロジェクトでは最高の成果を生み出すことができました。
成功経験1:手動ベースからの大胆な「全自動」転換
私のような非エンジニアの視点では、既存の手動運用を今よりも楽にするような改善案の発想まででとまってしまっていました。対して、共に開発したエンジニアメンバーが持っていたのは、「全自動をベースにしたシステムにする」という、根本から仕組みを変える発想でした。
具体的には、利用者である従業員の操作において、予約管理を”手動操作にて確保”してもらうのではなくて、そもそも出社想定の曜日を設定しておいてもらうことで、”毎週自動で席が確保”されるシステム案が出てきました。これは、システムを最大限に生かすというエンジニアならではの発想で、自分(非エンジニア)から見ても新鮮な発想でした。
この発想を構築することで、結果として運用工数を劇的に削減し、当初の課題(スプレッドシートでの管理の大変さを減らすことや固定席化の阻止)を効果的に解決することができました。
成功経験2:説明を不要にする優れたUI
そして、もう一つプロジェクトの成功に大きく貢献したのが、UI(ユーザーインターフェース)の質の高さでした。
出来上がったシステムはUIが非常に優れており、利用者への説明がほぼ不要なほど誰でも直感的に理解できる画面を作成することができました。これは従業員からの非常に高い満足度につながっています。
システムの仕組み面を単に改善するだけでなく、UIの向上が使い勝手の良いシステムへ変貌させたと感じ、これも自分(非エンジニア)から見ても新鮮な経験でした。
(参考:実際に開発した社内座席システムのUI画面です。人の名前はダミー名)


非エンジニアでは発想できない視点を提供へ
非エンジニアは、解決したい「目的」や「運用フロー」といった利用者視点の追求に強みを持っています。一方で、その目的を達成するための技術的なアプローチや革新的な提案は、エンジニアの専門性が最も発揮される領域です。
今回の開発でも、エンジニアの持つ「技術力の視点」を活用し技術提案と構築を発揮したことで、全自動処理や直感的に理解できるUIといった最高の成果が生まれました。今回のケースも踏まえて、非エンジニアからの提案をそのまま鵜呑みにせず、エンジニアの高い技術力からの解決視点を提案・構築することが、システム開発において大切なのだと感じています。
まとめ:プロジェクトの成功は「多様な視点」の統合によって達成される
今回の社内開発プロジェクトでは、システム開発をする中で、エンジニアと自分のような非エンジニアとの視点の違いがいくつかあることに気づきました。
- 【視点①】「何を作るか」より「なぜ作るか」へ
- 【視点②】「開発視点」から「運用・利用者視点」へ
- 【視点③】非エンジニアにない発想の提案へ
これらの視点の違いは、非エンジニアとのやり取りの中でエンジニアがもっと伸ばせる重要なポイントと感じており、冒頭にあった悩みを抱えるエンジニアの方々にとって視点を変えるきっかけの内容になっていると思います。
今やAIも進化し、コーディング業務の一部はエンジニアでなくてもできてしまう時代になっており、コーディング業務の需要は変化していくかもしれません。だからこそ今後のエンジニアには、多様な要望や声をもとに、目的を考え・言葉を変えて・技術提案できる視点が、より一層求められる存在になっていくと確信しています。
ぜひ、非エンジニアとの視点の違いを理解したエンジニアを目指していきましょう。
「言われた通りに作る」だけじゃ物足りないあなたへ
ニフティライフスタイルでは、職種の垣根を超えて「なぜ作るのか」から一緒に考え、技術の力で課題を解決できるエンジニアを求めています。 「技術的なアプローチで運用を変えてみたい」と思った方、ぜひ一度お話ししませんか?
掲載内容は、記事執筆時点の情報をもとにしています。